コーヒー業界に新風を吹き込む「流動床焙煎」とは?
コーヒーの焙煎方法といえば、多くの人がイメージするのはドラム式のロースターではないでしょうか。くるくると回転するドラムの中で、豆がじっくりと熱を帯びていく——あの光景は、コーヒー好きにとってどこか象徴的なものがありますよね。
でも実は、焙煎の世界にはもうひとつの主要な方式があります。それが流動床焙煎(Fluid-Bed Roasting)です。熱風で豆を浮かせながら焙煎するこの方法は、均一な熱の通りやすさと、クリーンなフレーバーの出やすさが特徴として知られています。今回ご紹介するのは、そんな流動床焙煎の世界に新たな一石を投じたメーカー、Roast Masterの話です。
サンディエゴ「World of Coffee」でのデビューが話題に
2026年4月、アメリカ・サンディエゴで開催されたコーヒーの国際見本市「World of Coffee San Diego」。世界中からロースター、バリスタ、サプライヤーが集まるこのビッグイベントに、ひとつの注目すべき新顔が登場しました。
それが、Roast Master(ロースト・マスター)です。流動床焙煎機のメーカーであり、グリーンコーヒー(生豆)の販売も手がけるこの企業が、アメリカのコーヒートレードショーに初めて出展し、新世代のマシンラインナップを披露しました。
業界関係者の間でも「流動床でここまで来たか」という声が聞かれたようで、デビューとしては十分すぎるインパクトを残したようです。
FABシリーズとはどんなマシン?
Roast Masterが今回発表したのは、「FAB(Fluid-Air Bed)シリーズ」と呼ばれる新世代の流動床焙煎機です。
このFABシリーズの特徴をざっくりまとめると、こんな感じです:
- 熱風による均一焙煎:豆を空気で浮かせながら焙煎するため、ムラになりにくい
- クリーンなカップクオリティ:不要な煙や焦げのニュアンスが出にくく、豆本来の風味が引き出されやすい
- 操作性の高さ:焙煎プロファイルの再現性が高く、スペシャルティコーヒーのロースターにも向いている
- 複数のサイズ展開:小規模なカフェから中〜大規模なロースタリーまで対応できるラインナップ
特に注目されているのが、再現性の高さという点。スペシャルティコーヒーの世界では、同じ豆を何度焼いても同じ仕上がりになることが非常に重要視されます。その意味で、流動床式の持つ均一性は大きなアドバンテージになりえます。
ドラム式 vs 流動床式:それぞれの特徴を比較してみよう
「そもそもドラム式と流動床式ってどう違うの?」という方のために、簡単に整理してみましょう。
| 比較項目 | ドラム式 | 流動床式(FABなど) |
|---|---|---|
| 熱の伝わり方 | 伝導熱+対流熱 | 主に対流熱(熱風) |
| 焙煎の均一性 | 豆の位置によりムラが出ることも | 浮遊させるため均一になりやすい |
| フレーバーの傾向 | ボディ感・甘みが出やすい | クリーン・明るいフレーバーが出やすい |
| 焙煎時間 | 比較的長め(10〜15分前後) | 比較的短め(5〜10分前後) |
| 普及度 | 業界全体でスタンダード | ニッチだが近年注目が高まっている |
どちらが「正解」ということはなく、目指すコーヒーの味わいや用途によって使い分けるのがベスト。ただ、流動床式のマシンの品質とアクセスしやすさが向上してきたことで、選択肢がより広がってきているのは確かです。
グリーンコーヒーの販売も手がける「二刀流」企業
Roast Masterが他のマシンメーカーと一線を画すのは、焙煎機の製造・販売だけでなく、グリーンコーヒー(生豆)の調達・販売も行っている点です。
これはロースターにとってかなり魅力的なポジションかもしれません。なぜなら、「マシンを買って、豆の仕入れ先も紹介してもらえる」という、いわばワンストップのサポートが期待できるからです。特に独立系の小規模ロースターや、これからロースタリーを始めようとしている人にとっては、頼もしいパートナーになり得ます。
コーヒーのサプライチェーンを川上から川下まで見渡せる企業が、焙煎機を作る——これは単なるメーカーではなく、コーヒー全体の文化や品質へのこだわりを持った存在として受け取れます。
日本市場への示唆——流動床焙煎のこれから
日本のコーヒーシーンを見渡すと、やはりドラム式ロースターが圧倒的多数を占めています。スペシャルティコーヒー専門の焙煎所でも、Giesen、Loring、Probatといったドラム式マシンが主流です。
一方で、流動床式に対する関心は、じわじわと高まりつつあります。理由のひとつは、スペシャルティコーヒーのトレンドが「透明感のあるフレーバー」「産地の個性をクリーンに表現すること」を重視する方向に向かっているから。流動床式が得意とする、まさにその領域です。
Roast MasterのFABシリーズが今後、アメリカ市場を足がかりにアジアや日本市場にも展開してくるとしたら——焙煎スタイルの多様化が、日本のコーヒーカルチャーにどんな変化をもたらすか、ちょっと楽しみになってきませんか?
まとめ:焙煎の「選択肢」が広がる時代へ
今回のRoast MasterとFABシリーズの話は、単に「新しいマシンが出た」というニュース以上の意味を持っていると思います。
- 流動床焙煎という選択肢が、より現実的になってきた
- グリーンコーヒーと焙煎機をつなぐ新しいビジネスモデル
- スペシャルティコーヒーの品質追求に応える新世代のテクノロジー
コーヒーの味は、豆だけで決まるわけじゃない。どんな機械で、どんな考え方のもとで焼かれるか——そういったことが、一杯のカップにじわっと滲み出てくるものです。
これからのコーヒー業界が、どんな焙煎の多様性を見せてくれるのか。Roast Masterの動向も含めて、引き続き注目していきたいと思います。
参考
— TARS


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