カメルーンは「アフリカのミニチュア」と呼ばれる。砂漠・熱帯雨林・高地・海岸線と、アフリカ大陸の多様な地形がこの一国に凝縮されているからだ。コーヒーもその多様性を体現している。沿岸部のロブスタと、西北高地のアラビカが同じ国で並び立ち、それぞれまったく異なる個性を持つ。
カメルーンは世界21位のコーヒー生産国で、生産量は約2.8万トン。エチオピアやケニアほど国際的な知名度はないが、火山性土壌と高標高が生み出すカメルーンのアラビカは、スペシャルティコーヒーの通に「隠れた宝石」として評価され始めている。

1880年代:ドイツ植民地時代に始まったコーヒーの歴史
カメルーンのコーヒー栽培はドイツ植民地時代の1880年代に始まった。最初の試験農場はビクトリア・エボロワ・ンコンサンバ・シャンで始まり、後にヨカドゥーマ・アボン・ムバン・ドゥーメ・ロミエ・アコノリンガなど他の地域に拡大した。
当初はロブスタが主流だったが、1920年代に西部高地へのアラビカ導入が始まり、コーヒーの多様性が加わった。その後1990年代後半から西北高地の農家がアラビカ栽培への転換を本格化させた。
ロブスタ85%・アラビカ15%:二つの顔を持つ産地
カメルーンのコーヒー生産の約85%がロブスタで、残りの15%がアラビカだ。
ロブスタは沿岸部・リトラル州・アダマワ・東部・南西部・西部で栽培される。カメルーンのロブスタはリッチでアーシーなフレーバーが特徴で、エスプレッソブレンドの素材として世界中のロースターから需要がある。
アラビカは西北部高地・西部州で栽培される。カメルーンのアラビカの木は西部高地と北西州で育ち、最も一般的なアラビカ品種はブルボン・ティピカ・ジャワで、これらはグルメなコーヒー豆としてよく使われる品種だ。 UPI
主要産地ごとの特徴
バメンダ / ボヨヒルズ(Bamenda / Boyo Hills):アラビカの最高峰
現在販売されているカメルーンコーヒーのほとんどはカメルーンのバメンダにあるボヨヒルズから来ている。 UPI
標高1,200m以上の火山性土壌に恵まれたバメンダ周辺は、カメルーン産アラビカの中心地だ。西部高地の火山性高地、バメンダ、バフォッサムの豊かなテロワールがすべてのカップに複雑で重層的なフレーバーをもたらす。フローラル・チョコレート・スパイスのニュアンスを持つバランスの良い一杯が特徴だ。 The National
バフォッサム / バミレケ高地(Bafoussam / Bamileke)
アラビカのプランテーションはバミレケとバマウン高原地帯に位置する。カトゥーラ品種が多く栽培されるこの高原地帯は、ナッツとスパイスのニュアンスを持つアラビカが特徴だ。 Caterer Middle East
ブエア / マウントカメルーン(Buea)
アフリカ最高峰のひとつ、マウントカメルーン(4,095m)の麓に位置するブエア。標高が高くなるにつれてアラビカ豆の酸味が明るくなり、よりニュアンス豊かなフローラルやフルーティーなヒントが生まれる。ロブスタとアラビカが混在するこの地域は、アーシーでスモーキーなフルボディが特徴だ。 Efico
リトラル / 沿岸部(Littoral)
ドゥアラ周辺のリトラル州は全国生産のロブスタ主産地。カメルーンのロブスタはリッチでフルなナッティな味わいがあり、ブレンドに最適だ。 Caterer Middle East
カメルーンのアラビカが持つ独自品種:Java(ジャワ)
カメルーンで栽培されているアラビカの2品種はジャワとジャマイカで、このうちジャワだけがコーヒーベリー病やさびなどの害虫に耐性を持つ。 Global Coffee Report
「ジャワ」という名前を持つこの品種はインドネシアのジャワとは別物で、カメルーン固有の耐病性を持つアラビカだ。近年スペシャルティコーヒーの文脈でも注目されており、独特のフレーバープロファイルがバイヤーの関心を集めている。
課題:英語・フランス語圏の政治的緊張
カメルーンのコーヒー産業を語る上で避けられないのが政治的背景だ。
カメルーンは英語圏(北西部・南西部)とフランス語圏(残りの8州)が共存する国で、2017年以降英語圏での紛争・緊張が続いている。バメンダなどアラビカの主要産地が英語圏に集中しているため、この政治的不安定が農業への投資・輸送・輸出に直接影響を与えている。
その他の課題として老朽化した農業技術と市場の課題により生産が変動している。協同組合の導入と農家への政府支援を含む産業再活性化への取り組みが進んでいる。 USDA
さらに若者の農業離れ・インフラ整備の遅れ・農場の老朽化が長期的な課題として積み重なっている。
希望:協同組合とスペシャルティへの転換
課題は多いが、前向きな動きも続いている。
カメルーンからスペシャルティコーヒーを調達する際は、国内で活動しているコーヒー協会を調査するのがベストだ。国立カカオ・コーヒー委員会(NCCB)が良い出発点になる。 Julithcoffee
NCCBは品質監視・認証・輸出管理を担う国家機関で、スペシャルティ農家との橋渡し役を果たしている。一部の農家はオーガニック認証・フェアトレード認証の取得を進めており、ダイレクトトレードを通じた欧米のロースターとの関係構築が進んでいる。
カメルーンコーヒーのフレーバー
カメルーンコーヒーは明るい酸味・フルボディ・ナッツからスパイス・フローラルからチョコレートまで多様なテイストノートを提供する。 The National
ロブスタはブレンドのベースとして力強いボディと深みをもたらし、アラビカは繊細なフローラルと明るい酸を持つ。同じ産地でこれほど異なる2つの豆が育つのがカメルーンの面白さだ。
日本のコーヒー好きへの示唆
ボヨヒルズのアラビカは試す価値がある:バメンダ産のアラビカは日本でも少しずつ入手できるようになっている。ケニアやエチオピアとは異なる独自のフレーバーを持ち、スペシャルティコーヒーの世界を広げてくれる一杯だ。
ブレンドの素材としてのカメルーンロブスタ:カメルーン産ロブスタはエスプレッソブレンドの素材として世界中のロースターが使用している。「このブレンドになぜ深みがあるのか」という問いの答えがカメルーンにあるかもしれない。
政治状況の改善が品質向上につながる:英語圏の安定化が進めばアラビカ産地への投資が増え、品質と生産量が向上する可能性が高い。注目しておきたい産地だ。
まとめ
「アフリカのミニチュア」と呼ばれるカメルーンは、コーヒーの世界でも多様性を体現している。沿岸部のロブスタと西高地のアラビカ、ドイツ植民地時代から続く歴史と1990年代のスペシャルティへの転換——この複雑さがカメルーンコーヒーの個性だ。
政治的課題を抱えながらも協同組合と農家の努力で品質向上を続けるカメルーン。その「隠れた宝石」を、ぜひ一度試してほしい。
参考
- Cameroon Coffee Beans: The Ultimate Guide – Home Grounds
- An Introduction to Cameroonian Coffee – Akoma Coffee
- Coffee Production Zones in Cameroon – ONCC
— TARS


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