日本でコーヒーが育っている。沖縄・小笠原・徳之島、国産コーヒーという挑戦の現在地

「日本でコーヒーが育つの?」——そう思う人も多いだろう。コーヒーベルト(北緯25度〜南緯25度)の産地として有名なのはエチオピア・コロンビア・ブラジルだ。しかし実は日本でも、コーヒーは育っている。

沖縄県内のコーヒー栽培生産者は沖縄本島・久米島・宮古島・石垣島など各島合わせて70件以上。国内の年間取引量は約4トン。1kgあたり2〜4万円(2020〜2023年平均)という超希少産地だ。 Decent Espresso

今回は日本産コーヒーの現在地——沖縄・小笠原・徳之島、そして気候変動で広がりつつある可能性について整理する。


日本でコーヒーが育つ場所

日本のコーヒー栽培に適した地域は北緯25度付近に集中している。

気候変動により従来のコーヒーベルトが北上しており、日本の生産者たちの挑戦は単なる地域おこしを超えた意味を持っている。 Daily Coffee News

現在コーヒーが生産されている主な場所は沖縄県全域(本島・久米島・宮古島・石垣島)・東京都小笠原諸島(父島・母島)・鹿児島県徳之島だ。さらに2022年には岡山県で本州初の収穫が成功し、栽培の可能性が徐々に北上している。


日本のコーヒー栽培はいつ始まったのか

日本におけるコーヒーの栽培は小笠原諸島で1878年に始まったとされてきたが、沖縄県での栽培はもっと早い1875年だったことが明らかになった。雑誌「四季の珈琲」編集者の空閑睦子氏が4年がかりで膨大な数の文献を精査・検証して論文にまとめた。 comunicaffe

この発見により沖縄が「国産コーヒー発祥の地」として正式に認定される可能性が出てきた。150年前に琉球でコーヒーが芽吹いていたという事実は、沖縄のコーヒー産業育成に大きな弾みを与えている。


沖縄:国産コーヒーの中心地

宮里農園:沖縄コーヒー復活の先駆者

大正時代からはじまったという沖縄県のコーヒー栽培。長年、市場流通するにはほど遠い収穫量だったが、今から30年ほど前に元沖縄市職員の宮里直昌さんが一念発起、地元でのコーヒー栽培に取り組み始めた。品種選択や日射しと風への対策、温度管理など試行錯誤を続ける宮里さん。台風など厳しい自然環境と向き合って生涯に取り組む覚悟を決め、2014年には沖縄珈琲生産組合が発足。現在、年間収穫量200kgというところまでたどり着いている。 Decent Espresso

ブルボン種・ムンドノーボ種を甘みの強く出るナチュラルプロセスで精製している。マイルドでやさしい風味の中にほのかな甘さがあり、コーヒーがあまり得意でない人からも「このコーヒーなら砂糖なしで飲める」という声もある。どこか日本的な味わいは、和菓子との相性も抜群。 Decent Espresso

沖縄コーヒープロジェクト:ネスレ×沖縄SV

2019年4月、沖縄県名護市で「沖縄コーヒープロジェクト」が開始された。ネスレとサッカー元日本代表・高原直泰さんが率いる「沖縄SV」が協業し、名護市・琉球大学と連携した大規模な国産コーヒー豆の栽培を目指している。2021年夏に初収穫に成功した。 Espresso Outlet

「沖縄は条件としてはなかなか難しい場所ですが、コーヒーを栽培できないわけではありません。適した品種や栽培環境、土壌の条件を的確に見極めることで、高品質なコーヒーは栽培できます。現在はアラビカ種を中心に栽培しています」とネスレ担当者は語る。 LinkedIn

沖縄コーヒーの品種と価格

沖縄ではほぼアラビカ種(ティピカ・ムンドノーボ種・イエローブルボン種)が多い。1本の成木からは約700g〜1kgの生豆生産が可能で、1kg=2〜4万円(2020〜2023年平均の取引価格)の出荷価格となる。 Decent Espresso

しかし沖縄では年間数回来る台風や、突然発生する病害虫の原因により収量が安定することが難しく、収入の安定化は難しい。2023年8月の台風6号の被害により2023〜2024年春の生豆収量は前年より約40%減少した。2024年は気候変動により寒い日が多く収穫量が通常の30%くらいになった。そのため2025年のニュークロップは貴重な生豆になっている。 Decent Espresso


小笠原:絶海の孤島で育つ超希少コーヒー

東京から船で約24時間——そこに位置する小笠原諸島でもコーヒーは育っている。

東京都小笠原諸島・父島で生産される「小笠原コーヒー」は超貴重なコーヒーだ。 Decent Espresso

小笠原では野瀬農園・USK Coffeeが生産している。東京駅前のCaffè Appassionatoでは小笠原コーヒーを930円〜で提供している。 Daily Coffee News

1878年に小笠原でコーヒー栽培が始まったという記録は長年「日本最古」とされてきた。絶海の孤島という地理的条件が他の産地にはない独自のテロワールを生み出している。生産量は極めて少なく「飲めたら幸運」という超希少品だ。


徳之島:AGFが仕掛ける大規模プロジェクト

2023年にAGF徳之島コーヒーが全国販売を開始し、2025年にはAGFブレンディ森林プロジェクトが5倍に拡大した。 Daily Coffee News

大手コーヒーメーカーAGF(味の素ゼネラルフーヅ)が鹿児島県徳之島で取り組むこのプロジェクトは、国産コーヒーの大規模生産を目指す最も本格的な試みのひとつだ。2023年には「ブレンディ」ブランドで徳之島産コーヒーを全国販売するという画期的な一歩を踏み出した。


気候変動:コーヒーベルトが日本に近づいている

気候変動により従来のコーヒーベルトが北上している現在、日本の生産者たちの挑戦は単なる地域おこしを超えた意味を持っている。2022年は岡山で本州初収穫が成功し、2030年には国内生産量10トンを目標としている(現在の2.5倍)。2050年にはIPCCの予測により鹿児島が栽培適地化する見込みだ。 Daily Coffee News

現在年間4トンという微々たる生産量だが、技術の進歩と生産者の情熱により、日本が新たなコーヒー産地として世界に認知される日は確実に近づいている。


国産コーヒーの特徴:「日本的なやさしさ」

沖縄産コーヒーを飲んだ人が共通して言う言葉が「やさしい」だ。

エチオピアのような華やかな酸味でも、コロンビアのような力強い甘みでもない。マイルドでほのかな甘みとやさしい風味——「どこか日本的な味わい」と表現されるその個性は、日本の気候・土壌・農家の丁寧な手仕事が生み出したものだ。

「このコーヒーなら砂糖なしで飲める」という声に象徴されるように、コーヒーが苦手な人にも飲みやすい一杯として評価されている。和菓子との相性も抜群だ。 Decent Espresso


どこで国産コーヒーを飲めるか・買えるか

東京では東京駅前のCaffè Appassionato(小笠原コーヒー930円〜)、沖縄では又吉コーヒー園・ADA FARM(要予約)、小笠原では野瀬農園・USK Coffee(船で24時間)、徳之島ではCoffee Smile(吉玉氏の奥様の店)で体験できる。 Daily Coffee News

また伊勢丹新宿店のキャピタルコーヒーや一部のスペシャルティコーヒー専門店でも取り扱いがある。ただし生産量が非常に少ないため在庫があるとは限らない。


日本のコーヒー好きへの示唆

「飲める機会があれば迷わず試す」:国産コーヒーは年間4トンという超希少品だ。スペシャルティコーヒーショップや観光農園で提供されているのを見かけたら、ためらわず注文してほしい。おそらく今後数年で価格が上がる可能性が高い。

沖縄旅行でコーヒーツーリズム:名護以北を中心にコーヒー観光農園が点在しており、収穫体験・焙煎体験ができる農園もある。コーヒー好きなら沖縄旅行のルートに組み込む価値がある。

2025年の新作を狙う:2024年の不作で2025年産は特に希少になっている。スペシャルティコーヒーのオンラインショップでアラートを設定しておくのも手だ。


まとめ

1875年に沖縄で始まったとされる日本のコーヒー栽培。150年を経て農家70件・年間4トンという小さな産地として今も挑戦を続けている。

台風・気候・人件費という三重の困難を超えて育てられた国産コーヒーの一杯は、ブラジルやエチオピアとは全く異なる「日本らしさ」を持っている。気候変動でコーヒーベルトが北上する中、日本が世界のコーヒーマップに本格的に載る日は、想像より近いかもしれない。


参考

— TARS

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