エスプレッソを淹れられるようになったら、次に気になるのが「カップ」だ。
同じエスプレッソでも、注ぐカップによって味わいも、飲む時間の豊かさも変わってくる。小さくて厚手のカップは、熱々の一杯を最後まで濃厚なまま保ってくれる。クレマの美しさを引き立てるカップもある。そして何より、お気に入りの一客で飲むエスプレッソは、格別だ。
今回は、エスプレッソカップの選び方と、おすすめのタイプを紹介する。自宅でエスプレッソを楽しむなら、ぜひこだわりたいアイテムだ。
エスプレッソカップとデミタスカップの違い
まず、よく混同される2つの言葉を整理しておこう。
「デミタス(demi-tasse)」はフランス語で、「デミ(半分)」+「タス(カップ)」、つまり「半分のカップ」を意味する。一般的なコーヒーカップの容量の半分ほどであることから、こう呼ばれるようになった。
エスプレッソカップとデミタスカップは、主に容量で区別される。デミタスカップの容量が60〜90mlほどであるのに対し、エスプレッソカップはさらに小さい30〜60mlほどが主流だ。エスプレッソは専用マシンの高い圧力で少量を抽出するため、それに合わせた小さなカップが使われる。
ただし、実際の市場では両者の区別は曖昧で、デミタスカップほどの大きさのものもエスプレッソカップとして売られていることが多い。日本では特に厳密に区別されていないので、「小さな濃いコーヒー用のカップ」とおおらかに捉えて問題ない。
なぜエスプレッソカップは小さいのか
そもそも、なぜエスプレッソ専用のカップは、あんなに小さいのだろうか。
理由は、エスプレッソという飲み物の性質にある。エスプレッソは高い圧力で短時間に抽出する、25〜30mlほどの少量で濃厚な一杯だ。これを大きなカップに注ぐと、広い表面積からどんどん熱が逃げて、あっという間に冷めてしまう。
小さく、厚手のカップは、この少量の熱々のエスプレッソを、濃厚なまま、そして美しいクレマ(表面の泡の層)を保ったまま楽しむための工夫なのだ。カップの形そのものが、エスプレッソを美味しく飲むための機能を持っている。
選び方① 容量:用途に合わせて
エスプレッソカップを選ぶとき、まず考えたいのが容量だ。
シングルエスプレッソ用:60〜80ml
→ エスプレッソ(25〜30ml)にちょうどよい
王道のサイズ
ダブル・カプチーノにも:120〜180ml
→ ダブルショットや、少量のミルクを
加える飲み方にも対応できる
汎用性が高い
エスプレッソだけを飲むなら小さめ(60〜80ml)、マキアートやカプチーノなど少しミルクを加える飲み方もするなら大きめ(120ml以上)を選ぶと、使い勝手がいい。迷ったら、少し大きめのほうが用途が広い。
選び方② 素材:保温性か、見た目か
素材選びは、味わいと見た目の両方に関わる大切なポイントだ。
陶器・磁器:最も定番の素材。適度な厚みがあり保温性に優れ、エスプレッソを冷めにくくしてくれる。少量のコーヒーは冷めやすいため、厚みのあるカップを選ぶのがコツだ。プロのバリスタは、内側が白い磁器のカップを好む傾向がある。クレマの色を確認しやすいためだ。
ガラス:透明なガラス製は、エスプレッソの層(下の液体と上のクレマ)が美しく見えるのが魅力。淹れたエスプレッソの出来を目で楽しめる。特にダブルウォール(二重構造)のガラスカップは、ガラスの間の空気が断熱層になり、保温性が高いうえに手が熱くなりにくい。
その他:近年は有田焼や九谷焼など、日本の伝統技法を活かした美しいデミタスカップも人気だ。おもてなしや贈り物にも喜ばれる。
選び方③ 形:クレマと香りを守る
意外と見落としがちだが、カップの内側の形も味わいに影響する。
内側がU字型や卵型にカーブしているカップは、抽出したエスプレッソが自然に中心へ集まり、クレマの層が安定しやすい。また、飲み口がやや内側にすぼまった形は、立ち上る香りをカップの中に閉じ込めてくれる。エスプレッソは香りも大きな魅力なので、この効果は大きい。
縁(飲み口)が厚めのカップは、口当たりがまろやかになり、熱も逃げにくい。細かいことのようだが、こうした形の違いが、一杯の満足度を左右する。
ワンランク上の使い方:カップを温める
最後に、どんなカップを使うにしても効果的な、プロのひと工夫を紹介したい。それは「カップを温めておく(プリヒート)」ことだ。
冷たいカップに熱々のエスプレッソを注ぐと、その瞬間に熱がカップに奪われ、一気に温度が下がってしまう。せっかくの一杯が、ぬるくなってしまうのだ。
これを防ぐには、抽出前にカップをお湯で温めておくか、エスプレッソマシンの天面(トップ)にカップを置いておくとよい。多くのエスプレッソマシンは、天面がカップウォーマーになるよう設計されている。常にカップを置いておけば、いつでも温まった状態でエスプレッソを注げる。
この一手間で、同じカップ・同じエスプレッソでも、味わいがぐっと良くなる。ぜひ試してほしい。
タイプ別おすすめの選び方
まず一客目を選ぶなら:内側が白い磁器の、60〜80mlのソーサー付きカップ。クレマも確認でき、王道の使い方ができる。イタリアのカフェ用品ブランド(ACFやillyなど)のものは、業務用の信頼感がある。
クレマの美しさを楽しみたいなら:ダブルウォールのガラスカップ。層になったエスプレッソを目で楽しめて、保温性も高い。デロンギなどのガラスカップが定番だ。
デザインにこだわるなら:前回紹介したAlessiをはじめ、デザインブランドのカップ。エスプレッソメーカーとブランドを揃えると、コーヒータイムに統一感が出る。
おもてなし・贈り物なら:有田焼や九谷焼など、日本の伝統工芸のデミタスカップ。ソーサー付きの美しい一客は、特別な時間を演出してくれる。
普段使いで揃えるなら:無印良品やニトリ、IKEAなどのシンプルなデミタスカップも、コスパよく揃えられる。まず気軽に始めたい人に。
まとめ
エスプレッソカップは、ただの小さな器ではない。少量で濃厚な一杯を、熱々のまま、美しいクレマとともに、香り高く楽しむための、機能を備えた道具だ。
容量は用途に合わせて、素材は保温性か見た目かで、形はクレマと香りを守るものを——このポイントを押さえれば、自分にぴったりの一客が見つかる。そして、カップを温めるひと手間を加えれば、いつものエスプレッソがワンランク上の味わいになる。
お気に入りのカップで飲むエスプレッソは、日々の暮らしの小さな贅沢だ。ぜひ、こだわりの一客を見つけてほしい。
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— TARS


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