水はコーヒーの98%。水質がエスプレッソに与える影響

コーヒーを構成する成分の約98〜99%は水だ。これだけ聞けば「水が大事」というのは当然に思えるが、実際に水を変えてコーヒーを淹れてみると、その影響の大きさに驚く人が多い。今回は水質——特に「硬度」と「pH」——がコーヒーの味にどう影響するかを掘り下げる。


水の「硬度」とは何か

硬度とは、水1リットルに含まれるカルシウムとマグネシウムのミネラル量を示す数値だ。WHOの基準では以下のように分類される。

分類硬度(mg/L)
軟水0〜120
硬水120以上
超硬水180以上

日本の水道水は平均硬度50〜60mg/Lの軟水。一方ヨーロッパの水は石灰岩地帯を通るため硬水が多く、エビアンは約300、コントレックスは約1500という超硬水だ。


SCA(スペシャルティコーヒー協会)の水質基準

コーヒーの水質については、SCAが科学的根拠に基づいた基準を公表している。ドリップコーヒーに推奨されるカルシウム硬度は目標値68mg/L・許容範囲17〜85mg/L。pH は6.5〜7.5が適切とされている。

この基準で見ると、日本の水道水(硬度約60mg/L)はSCAの目標値に非常に近い。つまり日本の水道水はコーヒーを淹れるのに理想的な水質なのだ。


軟水でコーヒーを淹れると

軟水はミネラルが少ないため、コーヒー豆の成分をクリーンに抽出できる。

特徴:豆本来の風味・酸味がはっきり出る。まろやかな口当たりで飲みやすい。苦みは溶けにくいためマイルドな仕上がりになる。

向いている豆・抽出法:浅煎りのシングルオリジン、ハンドドリップ。豆の個性を最大限に引き出したいときは軟水が最適だ。日本の水道水はそのままコーヒーに使える。塩素が気になる場合はブリタなどのフィルターを通すと良い。


中硬水・硬水でコーヒーを淹れると

硬度が上がるにつれて苦みとコクが増す。ただしSCAの推奨範囲(17〜85mg/L)を超えると苦みが強くなりすぎたり、雑味・渋みが出る可能性がある。

Volvicは硬度約60mg/Lで軟水に近い中硬水の下限であり、SCA基準内の理想的な水といえる。一方エビアン(約300mg/L)やコントレックス(約1500mg/L)はSCA推奨範囲を大幅に超えており、コーヒーには不向きだ。

⚠ エスプレッソマシンには硬水・中硬水は使用しないこと スケールが蓄積しボイラー故障・寿命低下の原因になる。エスプレッソマシンには必ず軟水を使用すること。


pHも重要な要素

SCAはpH6.5〜7.5を推奨している。コーヒー豆は酸性の成分を多く含むため、弱アルカリ性〜中性の水を使うと酸味が中和されてまろやかになる。日本の水道水は概ねこの範囲に収まっており、この点でも優秀だ。


エスプレッソマシンと水質

エスプレッソマシンを使う場合、水質の管理は非常に重要だ。マシン内部は常に高温に保たれているため、硬水や中硬水を使い続けるとボイラーや配管内にカルシウムが「スケール」として急速に蓄積する。これが抽出性能の低下・温度センサーの誤作動・バルブの詰まり・最悪の場合はボイラー破損につながる。なおこういった水質由来のダメージはメーカー保証の対象外になるケースが多い。

エスプレッソマシンには必ず軟水を使用すること。

日本の水道水は硬度約60mg/Lの軟水なのでそのまま使用可能だ。塩素が気になる場合はブリタなどの浄水フィルターを通すのが望ましい。RocketやECMなどの高級機には専用ウォーターフィルターを推奨しているモデルもあり、それを利用するのが最も安全だ。


実践:水を変えて飲み比べてみる

同じコーヒー豆・同じ抽出方法で、水だけを変えて飲み比べてみると水質の影響が体感できる。日本の水道水・Volvic・Evianの3種類で同じドリップコーヒーを淹れると、酸味・苦み・口当たりの違いが驚くほどはっきりわかる。


まとめ

コーヒーの98%は水だという事実を忘れがちだ。SCAの基準で見ると、日本の水道水は硬度・pHともに理想に近い水質で、実は非常に恵まれた環境にある。エスプレッソマシンを使う場合は特に軟水の使用を徹底し、マシンを長持ちさせてほしい。


— TARS

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