コーヒーの自家焙煎を始めるなら、まず手網焙煎から入るのがいちばんだと思っている。特別な機械は要らない。手網とガスコンロと生豆があれば、今日から始められる。
ぼく自身も手網焙煎から自家焙煎の世界に入った。最初はチャフが部屋中に飛び散り、煙で目が痛くなり、豆を焦がして失敗した。でもその失敗があったから、今では焙煎の流れが体に染み付いている。今回は初めての人でも迷わないよう、道具の選び方から細かいコツまで丁寧に解説する。

必要な道具
まずは道具を揃えよう。ほとんどが家にあるものか、安価に揃えられるものだ。
① 手網(必須)
Amazonや東急ハンズ、コーヒー専門店などで2,000円代で手に入る。底に凹凸があり豆を攪拌してくれる専用の手網もあるが、銀杏や豆を煎るための一般的な手網でも代用できる。 Essense Coffee
サイズは直径20cm前後が使いやすい。毎日1杯コーヒーを飲む人なら一週間に一度100gを焙煎するのがおすすめで、直径約20センチがちょうどいい。 Wikipedia
② ガスコンロ(必須)
ガスの家庭でも家庭用のコンロの多くは安全装置が付いていて、高温になると勝手に火力を下げられるためカセットコンロがおすすめだ。家庭用コンロでも焙煎できるが、安全装置が作動して火力が落ちることがある。ベランダでやる場合はカセットコンロが便利だ。 Essense Coffee
③ 軍手(必須)
手網は焙煎中に非常に熱くなる。必ず軍手を着用すること。素手で持つのは禁物だ。
④ うちわ or ドライヤー(必須)
焙煎後の急冷に使う。ドライヤーの冷風の方が手軽で効率が良い。
⑤ ザル(あると便利)
焙煎後に豆をザルに移して冷却する。チャフ(薄皮)を飛ばす際にも使いやすい。
⑥ タイマー(あると便利)
スマホのタイマーで十分。焙煎時間を記録しておくと次回の参考になる。
⑦ スケール(あると便利)
生豆の重さを量り、焙煎後と比較することで焙煎の進み具合を確認できる。焙煎が上手くできていれば珈琲豆の重さは生豆の状態から14〜17%減少している。生豆で100gなら焙煎後は84〜86g位になっているはずだ。 Wikipedia
生豆の選び方・入手方法
手網焙煎には豆選びも重要だ。
初心者には小粒で肉薄な豆が向いている。火が通りやすくハゼが起こりやすいため要領をつかみやすい。カリブ海系の豆——キューバ・ドミニカ・ハイチ・ジャマイカ産がおすすめだ。 Wikipedia
一方でブラジル・コロンビアの豆も入手しやすく扱いやすい。最初はあまり希少な豆を使わず、失敗しても惜しくない豆で練習するのが賢明だ。
生豆の入手先
- ユニコーヒー・Coffee Baitoなどのオンラインショップ
- 珈琲問屋(品揃えが豊富)
- Amazon(100g単位から購入できるショップも多い)
焙煎前の準備:ハンドピック
生豆を手網に入れる前に「ハンドピック」を行おう。ハンドピックとは豆を煎る前や後またはその両方で、異物や不良豆をチェックする作業のことだ。 Essense Coffee
割れた豆・虫食い豆・欠けた豆・石や異物を取り除く。これをやっておくだけで焙煎の均一性が上がり、雑味が減る。
生豆の洗浄について
生豆を磨くように水で洗うと、ホコリだけでなくシルバースキンを効率的に取ることができ雑味を減らせる。洗うというより「研ぐ」というイメージが重要だ。ただし浅煎りを目指す場合は水洗いをしない方がいいという意見もある。洗った場合は水をしっかり切り、濡れたまま焙煎しないこと。 Wikipedia

いよいよ焙煎:7ステップで解説
STEP 1:生豆を手網に入れる
手網から豆が飛び出さないようフタの左右をクリップなどでしっかりとめる。豆の量は手網の深さの3分の1程度が目安。詰め込みすぎると均一に熱が当たらない。 Dallacorte
STEP 2:蒸らし(水抜き)〜最初の3〜5分
手網焙煎の基本は「強火の遠火」だ。近すぎると豆が焼け焦げてしまい、遠すぎると温度が不安定になりうまく焙煎できなくなる。まず火加減を固定して手網と火の距離を調節して温度を工夫するのがコツ。 Wikipedia
コンロから15cm程度の高さを基本の位置として、1分間に120回ペースを心がけてリズミカルに振り続ける。 Essense Coffee
最初の2〜3分でチャフが出始める。少しだけ網の位置を上にあげ大きく振ってチャフをできるだけ飛ばす。チャフはあると焦げのもとなので吹き飛ばす。 Press Coffee
この段階は「蒸らし」または「水抜き」と呼ばれる。水抜きの段階では時間を多くかけても風味への悪影響がほぼない。ゆっくり水抜きをすすめることで焼きムラを防げる。 Essense Coffee
STEP 3:色の変化を観察〜5〜8分
チャフが落ち着いてきたら本格的な焙煎フェーズへ。少し火に近づけて温度を上げていく。
豆の色が黄色く変化してきたところで火力を少し上げる。ほんの少しでOK。 Essense Coffee
豆の色の変化を丁寧に観察しよう:
- 青緑色:生豆のまま(最初)
- 白っぽい色:水分が飛んでいる途中
- 薄茶色・黄色:焙煎が進んでいる証拠
- 茶色:1ハゼが近い
STEP 4:1ハゼ(ファーストクラック)〜9〜12分
パチパチ!という音が聞こえたら1ハゼがきている証拠だ。ハゼがあることは正常に熱反応が起きて豆に含まれる炭酸ガスが放出されている証拠だ。 Dallacorte
1ハゼが来たタイミングが火加減の強さを調節する目安となる。6〜7分程度を目安とする。それ以前に1ハゼが来た場合は火力が強いので少し弱める。それ以降に来た場合は火力が弱いので少し強める。 Essense Coffee
1ハゼ前半で焼き上げるとシナモンロースト、1ハゼ終了時で焼き上げるとミディアムローストとなる。 Press Coffee
STEP 5:1ハゼ後〜2ハゼまで
1ハゼが落ち着いたら少し火から離し、じっくり焙煎を続ける。
1ハゼ後半から少しだけ火力を絞ると失敗しにくい。浅煎りの場合は1ハゼ開始したらすぐに火力を絞り、1ハゼをゆっくりすすめることで焙煎を均一にしムラを抑制する。 Press Coffee
1ハゼが終わって2ハゼが始まるまでの間に1〜2分の間隔がある。この間にハイローストのタイミングがくる。 Dallacorte
STEP 6:2ハゼ(セカンドクラック)〜15分前後
再びピチピチ・ピシッピシッという乾いたガラスにひびが入るような音がし始める。これが2ハゼだ。 Dallacorte
2ハゼ開始時で焼き上げるとシティロースト。2ハゼピークでフルシティロースト。2ハゼ後半でフレンチロースト。2ハゼ終了時でイタリアンローストになる。 Press Coffee
2ハゼ以降は焙煎の進行が非常に速い。目と鼻と耳を総動員して好みの焙煎度で煎り止めしよう。
STEP 7:急冷
火から下ろしたら豆にこもっている熱でも焙煎が進んでしまうため、うちわやドライヤーの冷風などで急冷する。 Essense Coffee
ドライヤーの風の力で冷却しながらチャフを飛ばしてしまえると便利だ。シンクの中やお風呂場など、チャフを飛ばしても大丈夫な場所を確保しよう。 Essense Coffee
完全に冷めたらザルに広げて室温まで冷ます。
焙煎度と煎り止めのタイミング早見表
| 焙煎度 | タイミング | 味の傾向 |
|---|---|---|
| ライトロースト | 1ハゼ直前 | 強い酸味・青っぽさ残る |
| シナモンロースト | 1ハゼ前半 | 明るい酸味・フルーティー |
| ミディアムロースト | 1ハゼ終了時 | 酸味強め・苦みほぼなし |
| ハイロースト | 1〜2ハゼの中間 | バランス型・飲みやすい |
| シティロースト | 2ハゼ開始時 | コク・甘み・定番の味 |
| フルシティロースト | 2ハゼピーク | 苦み強め・エスプレッソ向き |
| フレンチロースト | 2ハゼ後半 | 強い苦み・燻製香 |
| イタリアンロースト | 2ハゼ終了時 | 最強の苦み・油が出る |
初心者おすすめ:最初はシティ〜フルシティを目標にすると失敗が少ない。
失敗しないための3つのコツ
コツ① 網の振り方を正しく
焙煎時の網の振り方がとても重要だ。ムラにならないようにあおるように振るやり方もあるが、高さが安定せず火力が不安定になるため、左右に揺するように振るのがおすすめ。常に水平を意識して、手首のスナップを利かせながら豆全体が転がるように振ろう。 Essense Coffee
コツ② 火力は「高さ」で調節する
火力の調整は少しで大丈夫。手網を火に近づけたり遠ざけたりすることでも調整は可能だ。コンロの火力を変えるより、網の高さで細かく調整する方がコントロールしやすい。 Essense Coffee
コツ③ 焙煎時間を長くしすぎない
焙煎時間を短めにすることで香りが飛びにくくなる。中煎りなら遅くとも12〜13分程度で焙煎を終わらせることが目安だ。長時間かけすぎると豆本来の個性が失われてしまう。 Essense Coffee
よくある失敗と原因
① 焦げた → 火が強すぎる・網が低すぎる。次回は高さを5cm上げてみよう。
② 生焼けになった → 火が弱すぎる・焙煎時間が短すぎる。火力が弱すぎるとハゼが上手く起こらなかったり焙煎時間が長すぎて風味が薄くなったりする。ほどよい火力を見つけることが手網焙煎の成功のコツだ。 Essense Coffee
③ 焼きムラが大きい → 振り方が均一でない・豆が多すぎる。豆の量を減らして振り方を確認しよう。
④ 1ハゼが来ない → 焦がさないようにと弱火にし過ぎてしまうと1ハゼがこずに浅煎りのタイミングを過ぎてしまう。もう少し火力を上げてみよう。 Coffee-effect
⑤ 渋みが強い → 水抜きが不十分。最初の蒸らし時間をもう少し長くとろう。
焙煎後の寝かせについて
焙煎したコーヒー豆は密閉容器に入れて4日ほど置いておくと味が整い飲める状態になる。 Dallacorte
焙煎したての豆はフレッシュで派手な香りがあるが、数日寝かせるとバランスが良く飲みやすいコーヒーになる傾向がある。 Dallacorte
焙煎直後に飲んでみて、2日後・4日後と飲み比べると味の変化が面白い。これも自家焙煎の醍醐味だ。
換気・チャフ対策
焙煎中は相当な煙とチャフが発生する。
換気:窓を全開に・換気扇をフル稼働。できればベランダや屋外での焙煎がおすすめ。
チャフ対策:シンクの中やお風呂場など汚れても大丈夫な場所を確保しよう。ドライヤーの風の力でチャフを吹き飛ばしながら冷却するのが効率的だ。新聞紙を下に敷いておくと後片付けが楽になる。 Dallacorte
まとめ
手網焙煎は不完全だからこそ面白い。毎回同じようにやっているつもりでも、豆の状態・天気・火加減によって結果が変わる。その変化を楽しみながら少しずつ自分のやり方を確立していくプロセスが、手網焙煎の本当の楽しさだと思う。
まず生豆を100g買って、失敗を恐れずに焙煎してみてほしい。焙煎したての豆で淹れたコーヒーを一口飲んだとき、「コーヒーを作った」という感覚がじんわりと広がるはずだ。
34coffee

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