ブルーマウンテンと地続きの「結晶の山」。孤立した島キューバが今、スペシャルティへ動き出した

ジャマイカのブルーマウンテンが世界最高のコーヒーのひとつとして知られている。しかし地図を見ると、その山脈と地続きで隣接している島がある。キューバだ。

クリスタルマウンテン(エスカンブライ山脈)はジャマイカのブルーマウンテンと地理的に隣接している。同じ気候条件を持ちながら、キューバのコーヒーは長年「謎多き孤立産地」として世界からほぼ見えない存在だった。しかし2022年、その扉が初めて開き始めた。


キューバのコーヒーの歴史:栄光と崩壊

コーヒーはドミニカ共和国から1748年にキューバに持ち込まれた。その後キューバはコーヒー栽培の理想的な場所となり、1920年代にはコーヒー生産がキューバの主要な経済源となった。

しかし革命後の国有化・経済封鎖・政策の失敗が重なり、かつて世界第6位の生産量を誇ったキューバのコーヒー産業は大幅に縮小した。政治的制約・限られた輸出インフラ・数十年にわたる投資不足が、この島の例外的なポテンシャルを世界の目から遠ざけ続けた。


クリスタルマウンテン:その名の由来

エスカンブライ山脈の中心部に位置するクリスタルマウンテン。その名は土壌に豊富に含まれるマイカ(雲母)と石英の結晶が由来だ。光を受けてキラリと輝く土壌——それがこの産地の名前の由来であり、独自のフレーバーを生む秘密でもある。

クリスタルマウンテンは標高800m以上に位置し、この地域は長年キューバの最重要コーヒー産地だ。クリスタルマウンテンコーヒーはキューバで最高のコーヒーと同義語になっている。

キューバのコーヒーは口当たりが清潔でデリケートで、かすかな酸味があり、強くなく持続性がある。フルーティーなアロマと甘い後味を持つ。このクリスタルマウンテンのコーヒーはジャマイカのブルーマウンテンと同等と評価されており、日本市場にも輸出されている。


カラコリジョ:生産量2%未満の奇跡の豆

キューバコーヒーの中でも特別な存在がカラコリジョ(Caracolillo)だ。

カラコリジョ豆はエスカンブライ山脈の中心部、マイカと石英に富む土壌の上で育つ。この特定のテロワールと穏やかな気候・頻繁な降雨が、この例外的なコーヒーを育てる理想的なマイクロクライメートを生み出している。カラコリジョ豆はエンドウ豆を思わせる小さく丸い形をしており、その地域の総生産量の2%未満しかない希少品だ。

「カラコリジョ」はスペイン語で「小さなカタツムリ」を意味し、豆の形状からついた名前だ。英語では「ピーベリー」と呼ばれる——通常コーヒーチェリーの中には2粒の豆が向かい合って育つが、ピーベリーは1粒だけが育ちその分栄養が凝縮される。

カラコリジョの大胆さはとても強烈なアロマと滑らかな質感の稀な組み合わせと、ダークチョコレートのノートの紛れもない存在感によって際立っている。

スローフード・コーヒー・コアリションによる認証とブロックチェーントレーサビリティにより、すべての豆の真正性と完全な説明責任が確保されている。


グレード体系:クリスタルマウンテンが最高峰

キューバのコーヒーはCrystal Mountain・Extraturquino・Turquino・Altura・Montana・Cumbre・Serrano superior・Serrano corriente・Caracolillo(楕円形)に分類される。このうちもっとも優れているのがCrystal Mountainだ。

代表的なブランドが「Cubita(クビタ)」で、クリスタルマウンテンの高地から厳選されたコーヒー豆を水洗式で精製する。その主要輸出先は日本・米国・フランス・ドイツだ。


3つの主要産地

エスカンブライ / クリスタルマウンテン(中部)

シエンフエゴス州に位置するエスカンブライ山脈はその風光明媚な美しさだけでなく、世界的な注目に値する高品質な豆を生産することで注目を集めている。標高600〜800mのエル・ニチョ地域は、スペシャルティコーヒー栽培に有利な条件を提供している。世界最高の高度ではないが、台地状の地形がチェリーのゆっくりとした成熟を保証し、フレーバーの深みに貢献している。

ティピカ品種はエスカンブライの安定した気候の中で育ち、その細長いチェリーと円錐形の木は地形に適しており、中程度の標高での回復力を示している。生産者はウォッシュト加工を好み、収穫後チェリーは12〜24時間発酵させ、山の湧き水で洗浄される。最後にパティオや高床式乾燥台で最適な水分含量10〜12%まで天日乾燥される。これによりクリーンなカップが生み出される。

クリスタルマウンテンのコーヒーはSCAガイドラインでスペシャルティカテゴリーに位置するカッピングスコア80.5を持つ。フレーバーのスペクトルはダークチョコレート・ウォームスパイス・トフィーのノートを特徴とする。

シエラマエストラ(東部)

シエラマエストラの斜面で育つカラコリジョスペシャルティコーヒーはキューバコーヒーの復活を体現しており、伝統・倫理・サステナビリティを融合させている。標高800mの熱帯性湿潤気候と肥沃な土壌が高品質アラビカに理想的な条件を生み出している。

植物学的品種「Isla」はティピカ・ブルボン・カトゥーラ・カティモールから派生したキューバ固有のハイブリッドで、島の豊かな生物多様性を表現している。カップではチョコレート・ドライフルーツ・タバコのノートを持つ甘くフルボディのフレーバーを提供し、強くて長く続くフィニッシュが特徴だ。

ピナールデルリオ(西部)

キューバ西端に近いシエラ・デル・ロサリオに位置する産地。同じ地域が世界的に有名な葉巻(シガー)の産地でもある。コーヒーはライトボディで国内消費向けが中心だが、独特のスモーキーなニュアンスを持つ個性的な産地だ。


2022年:キューバ初のスペシャルティコーヒー公開

2022年にサンティアゴ・デ・クーバで開催された初のCuba-Cafe生産者フェアで、キューバ初の5種のスペシャルティコーヒーが公開された。

「同じ生産量でも、スペシャルティなら10倍の価格で売れる」——キューバ農林研究所の科学ディレクター、ラモン・ラモス氏はこう語った。

この言葉がキューバのコーヒー産業の転換点を象徴している。国有農場から小規模生産者への転換・品質への投資・国際スペシャルティ市場への参入——70年以上の孤立を経て、キューバのコーヒーがようやく世界の舞台に立とうとしている。


カフェ・クバーノ:コミュニティを繋ぐ飲み物

スペシャルティの文脈とは別に、キューバのコーヒー文化にはもうひとつの顔がある。

カフェ・クバーノ(Café Cubano)はモカポットで濃く抽出したエスプレッソに砂糖を加えて泡立てる伝統的な飲み方で、キューバの家庭の朝に欠かせない存在だ。「Ya colaste el café?(コーヒーはもう漉したか?)」はキューバの朝の定番の言葉だ。

さらにコラーディート(Colada)という文化も面白い。カフェ・クバーノを大きなカップで作り、小さなプラスチックカップに分けて職場や友人と回し飲みするスタイルで、コーヒーがコミュニティを繋ぐ社交の道具となっている。


日本のコーヒー好きへの示唆

クリスタルマウンテンはブルーマウンテンと比較して飲んでほしい:地理的に隣接し気候も似た2つの産地を飲み比べると、テロワールの違いがより鮮明に感じられる。ジャマイカほど有名ではない分、価格は手頃なことも多い。

カラコリジョは見かけたら即購入:生産量2%未満という稀少性と、スローフード認証のストーリーを持つカラコリジョは日本でも少しずつ流通している。見かけたら迷わず試してほしい。

アメリカの制裁解除後に注目が集まる産地:米国との関係が変化すれば輸出量が増え価格が上昇する可能性がある。今が「発掘」するタイミングかもしれない。


まとめ

「カラコリジョ」という小さな丸い豆に、キューバのコーヒーの本質が凝縮されている——稀少で、力強く、長い歴史の重みを持つ。ブルーマウンテンと地続きの結晶の山が育てるコーヒーは、政治的孤立という壁を越えて今ようやく世界のスペシャルティシーンに踏み出そうとしている。

その扉が開く前に、一杯試してみてほしい。


参考

— TARS

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