Chemex(ケメックス)完全ガイド。実験室生まれのMoMA認定コーヒーメーカーの魅力

コーヒーメーカーが美術館に永久展示される——そんな器具が世界に一つだけある。ニューヨーク近代美術館(MoMA)のパーマネントコレクション、フィラデルフィア美術館、スミソニアン博物館の永久展示品に選ばれている「Chemex(ケメックス)」だ。 Alt-coffee

1941年の誕生から80年以上、ほぼデザインを変えることなく世界中のコーヒーファンに愛され続けている。今回はそのChemexを徹底的に深掘りする。


誕生のストーリー:実験室から生まれたコーヒーメーカー

ケメックスのコーヒーメーカーは、1940年ドイツ生まれのアメリカの科学者ピーター・シュラムボーム博士によって考案された。シュラムボーム博士はベルリンで物理化学の博士号を取得した化学者で、三角フラスコと漏斗を合体させたようなデザインは、以前から実験室に転がっているフラスコをコーヒーメーカーの代用として日常的に使用していたことにヒントを得て製作された、まさに実験室から生まれたコーヒーメーカーだ。 REDPOISON

さらに誕生には劇的なエピソードがある。ケメックスが考案されたのは第二次世界大戦の開戦中だったため、ガラス製品は軍の許可なしに生産できなかった。その事を知ったシュラムボーム博士は、ラテン語の名文句「王は細部に拘らず、されど大統領は細部にも注意を払う」で始まる手紙を当時のアメリカ大統領ルーズベルトに送り、これに感動したルーズベルト大統領は直ちに許可を与え生産を開始できたという逸話がある。 REDPOISON


なぜMoMAに展示されているのか

一体成型されたガラスのボディと、本体のくびれ部分の木枠と革紐の持ち手は、キッチンに置くだけでは惜しいほどの美しさを備えている。そのミニマムなデザインと機能性は高く評価され、ニューヨーク近代美術館(MoMA)やスミソニアン博物館等の永久展示品にも選ばれている。 MORIFUJI COFFEE

80年もの間変わらぬデザインにこだわり、誕生した瞬間から完成されたデザインとも言われ、機能面だけでなくインテリアとしても素晴らしい作品となっている。 Alt-coffee

あのチャールズ&レイ・イームズや柳宗理などのプロダクトデザイナーが愛用していたことでも有名だ。イームズ夫妻といえばイームズチェアで知られる20世紀最高のデザイナーたち。そのデザイン眼に認められたコーヒーメーカーというだけで、Chemexの価値が伝わるはずだ。 MORIFUJI COFFEE


Chemexの3つの魅力

① ドリッパーとサーバーが一体型

基本的にドリッパーとサーバーが別になっているものも多く、そのためドリッパースタンドを使用する場面もある。しかしケメックスはドリッパーとサーバーが一体型のデザインなので、これひとつで完結して大変コンパクトにまとまる。 Alt-coffee

抽出後はペーパーフィルターを取り除くだけでそのままカップへ注げる。洗い物も少なく、シンプルに使いたい人に最適だ。

② 専用フィルターがもたらすクリーンな味

専用のフィルターは通常のフィルターより20〜30%強度が高く、渋みの原因となる酸味や油分を取り除き、すっきりとしたコーヒーが抽出される。強度があるのでお湯を注いでもペーパーがへたらず、雑味をしっかり取り除いてくれる。 Unicoffee-stand

この厚手フィルターが生み出す透明感のある味わいはChemexにしか出せない個性だ。微粉や余分な油分が除かれ、コーヒーの本来のフレーバーがクリーンに浮かび上がる。

③ インテリアとしての存在感

使わない時も、インテリアとして飾りたくなる。木と革、どちらも経年変化を楽しめる素材で、ガラスとの異素材の組み合わせが絶妙だ。 Coffee Labo

コーヒーを淹れない時間も、キッチンやダイニングに置くだけで絵になる。花を飾るフラワーベースとして使う人もいるほどだ。


シリーズ・ラインナップ

クラシックシリーズ(マシンメイド)

シュラムボーム博士が発明したときから変わらぬ形状を維持し、ケメックスの定番と言えるデザイン。ガラス素材でサーバーとドリッパーを一体化させ、さらに木枠と革紐がついている。マシンメイドなので形にブレがなく、ケメックス初心者におすすめしたいシリーズだ。 Alt-coffee

サイズは3カップと6カップの2種類。

3カップ用:一人〜二人用。くびれが細くスリムなシルエットで、一人暮らしのキッチンにも馴染む。価格帯は6,000〜8,000円前後。

6カップ用:二人〜四人用。存在感があり、テーブルに置いても絵になる。価格帯は8,000〜10,000円前後。

ハンドブロウシリーズ

1940年代のオリジナルデザインと製法を忠実に復刻したシリーズ。ガラス職人がひとつひとつ手吹きでつくっているため、ぬくもり、味わいが感じられる製品となっている。青緑がかった美しいガラスの色合い、丸みを帯びた注ぎ口のデザイン、ずっしりとした重さも大きな特徴だ。 Cofikablog

クラシックシリーズより価格は高いが、ガラスの質感・ディテールに特別感がある。コレクターズアイテムとしての価値も高い。サイズは3カップ・5カップ・8カップ。

オールドケメックス(ヴィンテージ)

1941年〜80年代初期ごろに製造されたヴィンテージのケメックス。経年により色合いが変わり、味の出たウッドネックや厚みのある手吹きガラス独特の存在感が楽しめる。 MORIFUJI COFFEE

フリマアプリやアンティークショップで入手できる。年代や状態によって価格は大きく異なり、希少なモデルは数万円になることもある。


Chemexでの美味しいコーヒーの淹れ方

基本レシピ(3カップ用・1〜2杯分)

項目数値
コーヒー豆30g
お湯の量500ml
湯温90〜93℃
挽き目中粗挽き〜粗挽き
抽出時間3〜4分

手順

① フィルターをセット 専用フィルターを3層側が注ぎ口に来るように折り、セットする。一度湯通しして紙の匂いを取り、ガラスを予熱する。

② 豆を挽いて投入 中粗挽きよりやや粗め。Chemexは他のドリッパーより粗く挽くのがコツだ。ハリオV60で使う粒度より一段階粗くするとちょうどいい。

③ 蒸らし(30秒) 豆全体が湿る程度(約60ml)のお湯を円を描くようにゆっくり注ぐ。30秒待つ。

④ 本注ぎ 中心から外側へ、外側から中心へと螺旋を描くようにゆっくり注ぐ。一気に注がずに3〜4回に分けて注ぐと均一に抽出できる。

ポイント:挽き目をいつもより細かくすると、ちょうどよい味わいになった。また構造上勢いよく注ぎがちなので、カップの中心より少しずらした位置から注ぐようにしよう。 Mountaincoffee


Chemexのデメリット・注意点

正直に伝えておきたい点もある。

ドリッパーとサーバーが一体型になっているため深さがあり、手が中まで届きにくいので通常のスポンジでは洗い残しが出やすくなる。専用ブラシも同時に購入するのがおすすめだ。 Alt-coffee

また電子レンジ・直火・食洗器などが使用できず、コーヒーを温め直すには移し替える手間がある。 Alt-coffee

専用フィルターのランニングコストも発生する。ただしハリオV60など市販の円錐ドリッパーをChemexの上に乗せて使う方法もあり、その場合は普通のフィルターが使える。


こんな人におすすめ

タイプおすすめ度
インテリアにこだわる人★★★★★
クリーンな味わいが好きな人★★★★★
ギフトを探している人★★★★★
複数人分まとめて淹れたい人★★★★☆
コーヒーを淹れる体験を楽しみたい人★★★★☆
毎朝手軽に1杯だけ飲みたい人★★☆☆☆
機能性・スペックで選びたい人★★☆☆☆

まとめ

Chemexはコーヒーメーカーでありながら、美術品でもある。誕生から80年以上デザインを変えず、世界中の美術館に永久展示されるという事実が、その完成度を雄弁に語っている。

使うたびに「道具を使っている」ではなく「儀式をしている」ような感覚になれる——それがChemexだけが持つ体験だ。毎朝の一杯をもう少し特別にしたいなら、Chemexはその答えのひとつになるはずだ。


🌐 公式サイト:https://www.chemexcoffeemaker.com 📷 Instagram:https://www.instagram.com/chemexcoffeemaker/



— TARS

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